【社労士執筆】労働時間は週40時間が上限!? 数え方や週の始まり、労働時間制度毎のポイントを社労士が解説!
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執筆者
寺島戦略社会保険労務士事務所 社会保険労務士
櫻井 達也
労働基準法における労働時間の上限
1.労働基準法における労働時間の概要
労働基準法上、労働時間は1日8時間、1週40時間が上限 であるとされています。
この労働基準法上で定められた労働時間の上限を「法定労働時間」といいます。
例外もありますが、原則的にはこれが労働時間の上限とされています。
たとえば、始業が午前9時で終業が午後6時(間に休憩1時間)、土日が休日だとすると、ちょうど1日8時間、週40時間の労働時間となり、これが原則的な労働時間の上限ということになります。
2.残業が必要な場合
もし、会社(使用者)が労働者に対してこの時間を超えて労働させるためには、労使協定(いわゆる36協定)を締結し、届け出なければなりません。
週40時間の計算方法
1.週40時間の起算日
週40時間の計算をするにあたり、週の始まり(起算日)を決める必要がありますが、いつを始まりとするかは会社が任意に定めることができます。
そのため、就業規則等に記載をすれば、その日を起算日として、週40時間を計算することになります。
なお、行政解釈上、会社が週の起算日を特に定めていない場合は、日曜日を起算日とするとされていることから、就業規則等に定めを置かない場合は、日曜日を起算日とすることが一般的です。
2.割増賃金の支払と法定時間外労働等の意義
法定労働時間を超えて労働させた場合、会社は、通常の賃金に一定以上の割増率を乗じた賃金(割増賃金)を支払わなければならないとされています。
・「法定休日労働」については3割5分
・「深夜労働」については2割5分以上
と、それぞれの割増率を乗じた賃金を支払わなければならないとされています。
「法定時間外労働」とは、法定労働時間を超えた労働、すなわち、1日8時間超・1週40時間超の労働のことをいいます。
「法定休日労働」とは、法定休日の労働のことをいいます。
なお、「法定休日」とは、労働基準法35条で規定されている使用者が労働者に必ず与えなければならない休日のことを指します。
「深夜労働」とは、深夜時間帯(午後10時から翌午前5時まで)の労働のことをいいます。
3.具体例を確認
では、週の起算日・法定休日がともに日曜日で、所定労働日が月曜から金曜である会社を想定して、具体的に労働時間を計算してみましょう(深夜労働はないものとします。)
ケース1:平日に残業した場合
曜日 | 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
労働時間 | なし | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 9時間 | なし |
週の労働時間の合計は41時間となります。また、日曜日は労働していないため、法定休日労働はありません。
金曜日は1日の法定労働時間を超えているため、法定時間外労働1時間分の割増賃金の支払が必要になります。
なお、週法定労働時間も超えていますが、これに対する割増賃金の支払は不要です。
上記1日の法定労働時間超に対して割増賃金を支払うことになるためです。
ケース2:土曜日に勤務した場合
曜日 | 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
労働時間 | なし | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 4時間 |
この場合、週の労働時間の合計は44時間となります。また、日曜日は労働していないため、法定休日労働はありません。
1日の法定労働時間を超えている日はありませんが、週法定労働時間を4時間超えていることから、法定時間外労働4時間分の割増賃金の支払が必要となります。
ケース3:日曜日に勤務した場合
曜日 | 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
労働時間 | 4時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | なし |
この場合、週の労働時間の合計は44時間となります。また、日曜日に労働しているため、法定休日労働が4時間あることになります。
先にみたように、法定休日労働については3割5分以上の割増賃金の支払が必要となりますが、それと同時に、週労働時間が40時間を超えているため、法定時間外労働についての2割5分以上の割増賃金の支払も必要になるのではないか、という疑問が生じるかもしれません。
しかし、法定休日労働は法定時間外労働にはカウントされないため、このケースの場合、法定時間外労働はなし、法定休日労働は4時間ということになります。
すなわち、法定休日労働4時間分について、割増賃金の支払が必要となります。
フレックスや裁量労働制、パートアルバイトなど働き方による違いは?
フレックスタイム制や裁量労働制を採用している企業様も多いですが、このような制度を利用する場合についても確認します。
1.フレックスタイム制の場合
フレックスタイム制は、労働者が⽇々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることになる制度です。
フレックスタイム制の時間外労働等については、以下の記事を参照ください。
2.裁量労働制の場合
裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
この制度を採用した場合においても、1日8時間・週40時間を超える場合に36協定の締結等が必要となり、割増賃金の支払が必要になる点は、特に変わりません。
裁量労働制を適用する場合は、人件費の予測が立てやすい、残業管理の負担を減らせるといったメリットがあります。
ただ、しっかりと勤怠管理をしないと労働の実態を把握することが難しくなり、長時間労働の温床になる可能性があるため注意が必要です。
パートやアルバイトの場合
パートやアルバイトの場合で、特にフレックスタイム制や裁量労働制を適用しない場合は、36協定が適用される場合を除き、原則として1日8時間、週40時間が労働時間の上限となります。
どういうときに法令違反となるのか?法令違反をしないためには?
1.法定時間外労働等の上限
前述のとおり、36協定を締結した場合には、会社は労働者に対し、法定労働時間を超えて労働させることができます。
しかし、無制限に労働させることができるわけではなく、36協定を締結したとしても、原則として「月45時間・年360時間」が法定時間外労働の上限とされています。
ただし、例外として、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)には、以下の範囲内であれば、法定時間外労働・法定休日労働をさせることができます。
・法定時間外労働時間が年間720時間以内
・法定時間外労働時間が月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間)を超えられるのは、年6回まで
・法定時間外労働時間+法定休日労働時間が、単月100時間未満
・法定時間外労働時間+法定休日労働時間が、2か月ないし6か月平均で80時間以内
2.法令違反
この限度を超えて労働させた場合には、労働基準法違反となり、違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます。
また、労働者から未払残業代の請求があった場合には、当該未払金のほかに、付加金、遅延損害金の支払いが命じられることもあります。
3.法令違反をしないためには
まずは、利用している勤怠管理システムの中でそれぞれの労働時間制度で正しく法定時間外労働時間が計算されているのかを確認する必要があります
また、勤怠管理システムに記録されている労働時間以外に記録されていない労働が発生していると、そもそもの週40時間などの残業時間がうまく計算されていないケースも考えられます。
考えられるケースとしては、退勤後に突発的な労働が発生してしまったことや、夕方の退勤時に打刻を忘れてしまったなど、打刻漏れが原因となることがあります。
会社として法令違反しないためには、こういった未払いとなる労働時間がないかなどをチェックし、従業員の日々の労働の実態を適切に把握する必要があります。
労働時間管理には実態を把握していることが重要!
従業員が打刻をする勤怠管理システムでは、従業員が自由に打刻時間を操作できるために、サービス残業のリスクが・・・。
サービス残業になっていないことを証明するには労働実態を把握しておくことが重要です。
労働実態の把握のためにはPCログなどの業務をしていたことがわかる客観的記録が必要となります。
勤怠管理ツール「ラクロー」のご紹介
弊社の打刻レス勤怠管理ツール「ラクロー」は客観的記録をベースに把握した労働時間を、従業員や管理者が確認し労働実態にあっているかを判定しながら勤怠管理を進めることができます。
仮にログと労働実態が違う場合は理由を記載した上で修正を行うことで、従来の勤怠管理ツールでは煩雑化してしまう客観的記録と打刻の乖離チェックを省略でき、より効率的に適切に勤怠を管理できるツールです。
ラクローの法定外労働時間の集計方法は?
ラクローではそれぞれの労働時間制度に応じて、厚労省のガイドラインをもとにした法定時間外労働時間の集計を実現しています。
例えば、通常の週40時間の労働時間を超えた箇所はもちろん、フレックスタイム制・裁量労働制などそれぞれの計算式に応じて時間外労働を自動で集計しています。
また、裁量労働制の場合はみなし労働時間だけでなく、実労働時間についても別途算出し、実労働時間が長時間にならないように気付けるグラフもご用意しております。
フレックスタイム制においては、月末になるにつれて発生する法定外労働時間を特定の計算式からあらかじめ予測した「月末見込み労働時間」を表示することで、36協定を超過しないようあらかじめ防ぐことが可能になっています。
労働実態を把握することが打刻だけでは困難な場合については、客観的記録を利用しながら36協定違反をあらかじめ防げるような対策を実施し、自社の働きやすい環境づくりにお役立てください。