【IPO労務で注意すべきポイント】法定帳簿・規程類の整備と社会・労働保険の加入漏れ
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企業が上場するためには「上場企業としての適格性」が厳しく問われる証券取引所の審査をクリアする必要があります。
IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)を目指す企業に必要な労務管理体制について、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応・企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行う寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 寺島 有紀 先生にお話を伺いました。
全4回に渡りお送りします。
- 第1回 : 【事例あり】IPOの労務・勤怠管理で注意すべき4つのポイント
- 第2回 : 法定帳簿・規程類の整備と社会・労働保険の加入漏れ ←現在お読みの記事
- 第3回 : 未払い賃金(固定残業、管理監督者、裁量労働制)
- 第4回 : コンプライアンス違反(パワハラ、ダイバーシティ)
IPO労務で注意すべきポイント① 法定帳簿・規定・労使協定の整備
寺島先生:労務関連の規定は色々とありますが中でも重要なのは法定帳簿・規程・労使協定、この3つになります。
まず①規程ですが、「就業規則・賃金規程・育児介護休業規程」は全ての会社にあるべきものです。他にもリモートワーク・在宅勤務で光熱費等の負担について取り扱うリモートワーク規程や出張旅費規程、従業員規模が大きくなるとストレスチェック規程なども策定が求められて生きます。
雑談になりますが、リモートワーク規程には費用負担・勤怠のルールを明記します。在宅勤務は勤怠をつけなくてもよいと勘違いしている会社もありますが、通常と同じように労働時間を管理をすることなどを書いています。
寺島先生:次に②労使協定についてです。労使協定は非常に重要で、上場準備企業は必ず必要な労使協定が全て揃っているかを見られます。まずは時間外労働、休日労働の労使協定を結んでいなければいけません。36協定についてはまた後で説明しますが、時間外労働をさせるためには必ず整備されていなければならず、一年に一回の更新が必要です。時間外労働が何時間かを把握するために勤怠管理をしているわけでもあります。
他にも諸々ありますが、ベンチャー企業で多く利用されているフレックスタイム制や専門業務型裁量労働制等も労使協定がないとできません。企業としてこうした柔軟な労働時間制度を利用しようと思うと労使協定が必要になります。
寺島先生:後は③人事関連です。出勤簿や労働条件通知書等をそれぞれ法令で決められた法定保存期間、きちんと保管しておく義務があります。そういったものが揃っているかどうかを見られます。
IPO労務で注意すべきポイント② 社会保険の未加入者
寺島先生:次に社会保険・労働保険の加入漏れはないかです。
社会保険いわゆる健康保険・厚生年金保険については、正社員の3/4以上の労働をしているアルバイトも加入させる必要があります。正社員はだいたい週40時間働いているので、30時間以上勤務のアルバイト等が対象になります。
雇用保険は週所定が20時間以上が加入義務のある会社となりますので、雇用保険だけ加入して社保は加入していないという人もいるわけです。
ベンチャーによくあるのが代表取締役が実は社保に入っていないパターンと、試用期間中の社員を加入させていないパターンです。試用期間中であっても週所定労働時間が資格取得要件を満たす場合には入社日から加入しなくてはいけません。
学生インターンの場合、昼間の大学生には雇用保険は必要ありません。ただ、週30時間以上働いる場合は健康保険・厚生年金保険には加入させる必要があります。ここを知らない会社が結構あり、未加入のままにしているところがあります。
ラクロー:IPOの相談を受ける時、就業規則を直すところがあったりしますか?
寺島先生:あります。就業規則が後回しになってる会社は結構あるという印象です。法改正があればそれに応じた就業規則のアップデートが必要になります。
例えば法改正で「パワハラ防止に関する法ができた」ならば、「職場においてパワハラをしてはいけない」という方針を就業規則に落とし込むことまでが法改正対応になるわけです。
そこが後手後手になっていると、法改正対応が不十分ということになります。IPO準備=法に則った規定に改定されているかというところを含めてコンプライアンス遵守がなされているかが見られる部分があります。実態がどうであれ、まず外形的に整っていなければ話にならないので、就業規則の改定というのはみなさんに必ず行ってもらっています。
<続きは以下からお読みください>
- 第1回 : 【事例あり】IPOの労務・勤怠管理で注意すべき4つのポイント
- 第2回 : 法定帳簿・規程類の整備と社会・労働保険の加入漏れ ←現在お読みの記事
- 第3回 : 未払い賃金(固定残業、管理監督者、裁量労働制)
- 第4回 : コンプライアンス違反(パワハラ、ダイバーシティ)
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